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急な受診に、自分が行けないとき — 通院の付き添いを頼むという選択
予定を入れている日に限って、急な発熱で受診の連絡が来る。介護保険の通院介助と、保険外の付き添い・介護タクシー。検査で半日かかる通院を人に任せるための考え方と、頼むときに渡しておく情報をまとめました。
午前中に、施設から着信があります。「熱が38.5度あるので、受診をお願いできますか」。
その日は、前から入れていた予定がありました。仕事の打ち合わせかもしれないし、半年ぶりの自分の通院かもしれないし、ようやく取れた美容院かもしれません。
電話を切ったあと、少しのあいだ頭が真っ白になります。 どうしよう、今日は無理だ、でも行かないと——予定と移動時間と病院の受付時間が、いっぺんに頭のなかで渦を巻きます。手が止まって、そのまま数分たっていることもあります。この感じを知っている方は、たぶん少なくありません。
「行けない日がある」のは、当たり前のことです
介護している人にも、自分のスケジュールがあります。仕事があり、自分の通院があり、他の家族の用事があり、休む日もあります。予定が入っているところに急な連絡が来るのは、段取りが悪いからではありません。急なことは、こちらの都合を選んで起きてはくれないからです。
そして受診は、たいてい「ちょっと連れて行く」では済みません。待ち時間があり、検査が入れば結果が出るまでさらに待ちます。採血、レントゲン、場合によっては点滴。行ってみるまで何時間かかるか読めない、というのが実際のところです。半日仕事になることも珍しくありません。
だからこそ、自分が行けない日は、付き添いを人に頼んでいいという選択肢を、先に知っておく価値があります。
まず、ケアマネジャーに一本かけていい
その場で「行きます」か「行けません」かを決めなくて大丈夫です。先に担当のケアマネジャーに電話してください。
ケアマネジャーは、施設や病院、訪問介護の事業者と日ごろからつながっています。「今日は自分が行けない」と伝えれば、どこに何を頼めるかを、代わりに動いて調整してくれます。受診に付き添える事業者を当たってもらう、施設側と話をつけてもらう、次善の段取りを一緒に考えてもらう——ひとりで電話をかけ続けるより、ずっと早く片がつきます。
「行けません」と言うために電話するのではありません。「行けないときどうするか」を一緒に決めてもらうために電話します。
「大丈夫ですよ」と言ってくれる人
慌てた声で電話をかけて、開口一番に「大丈夫ですよ、まず落ち着いて」と返ってくる。それだけで、詰まっていた息が少しゆるみます。
制度に詳しいことは、もちろん大事です。でも、こういう日にほんとうに助かるのは、こちらの慌てをそのまま受け止めてくれることだったりします。急かさずに、「まずここに連絡しておきますね」「そのあいだにこれを探しておいてください」と、順番を一つずつ置いてくれる。指示されるのではなく、隣で段取りを引き受けてもらえる感じです。
頭が真っ白なときは、選択肢を並べられても選べません。選ばなくていいように、道を一本にしてくれる人がいると、それだけで手が動きます。制度の知識と同じくらい、この安心感が介護を続けさせてくれます。
そういう関係は、急ぐ日ではなくふだんのやりとりで積み上がっていきます。初回の面談のときから、小さな困りごとでも言葉にして渡しておく。そうすると、いざという日に、事情の説明から始めなくて済みます。
そして、もし今「この人には言いにくいな」と感じているなら——それを我慢し続けなければいけない決まりは、どこにもありません。言いにくさを感じていること自体を、事業所や地域包括支援センターに相談していいのです。
通院の付き添いを頼む、2つの道
介護保険のなかで頼む
訪問介護には、通院のための「通院等乗降介助」という枠があります。ヘルパーさんが運転する車への乗り降りと、その前後の介助を頼めるものです。
ただし注意したいのが、病院の中での付き添い(院内介助)は、原則として介護保険の対象外とされることが多いという点です。院内は病院のスタッフが対応する、という考え方が基本にあるためです。状況によって認められることもありますが、その判断は自治体やケアマネジャーによって変わります。「うちの場合はどうか」は、担当のケアマネジャーに確認するのが確実です。
もうひとつ、介護保険には単位(区分支給限度基準額)という1か月の上限があります。すでに使い切っていると、保険のなかではこれ以上足せません。
保険外(自費)で頼む
そこで出てくるのが、保険外の付き添いサービスです。全額自己負担になるかわりに、制度の枠がありません。
- 通院の付き添い(通院同行) — 行き帰りだけでなく、院内での付き添いや待ち時間もそのまま頼めます。医師の説明を聞いて伝えてもらえる事業者もあります
- 介護タクシー・移送サービス — 車いすのまま乗れる車両での送迎。付き添いまで頼める事業者もあります
- 自費ヘルパー — 保険の枠を使い切っていても、必要な時間だけ来てもらえます
保険外サービス全般については、「保険外サービス」という引き出しに整理しました。
遠慮しなくていい場面だと思います。 何時間かかるか分からない通院に半日を持っていかれると、その日だけでなく、翌日以降の余力まで削られます。休むために使うレスパイトケアと、考え方は同じです。
頼む日のために、先にやっておけること
急な日に慌てないために、落ち着いているうちにできることが3つあります。
1. 「行けない日がある」と、平時のうちに伝えておく。 立派な理由は要りません。地域にどんな事業者があるか、料金の目安はどのくらいか、事前登録が必要か。先に一度話しておくと、当日の電話が「相談」ではなく「発動」になります。
2. 持ち物を、ひとまとめにしておく。 保険証、医療証、お薬手帳、診察券、施設からの連絡票。自分以外の人が連れて行く日は、「どこに何があるか」を口で説明できることが大事になります。行き先ごとの持ち物を確認するなら CareReady が使えます。家族向けの持ち物チェックは公開中で、いま開いてそのまま使えます。
3. 「いつから、どうだったか」を言えるようにしておく。 受診で必ず聞かれるのに、いざとなると思い出せないのがここです。日々の様子を短く残しておくと、付き添いを頼む人にも医師にも、そのまま伝えられます。CareQuest は、そういう記録を登録なしで、短く残しておくための無料のWebアプリです。
任せた時間は、あなたの時間です
付き添いを頼んだ日、あなたは病院にいません。その数時間は、仕事に使っても、予定どおり出かけても、家で眠ってしまってもかまいません。
代わりに行ってもらうことは、手を抜くことではありません。続けるための段取りです。
ご注意: 通院介助・院内介助が介護保険の対象になるかどうかの扱い、保険外サービスの内容・料金・事前登録の要否は、お住まいの自治体や事業者によって大きく異なります。具体的な利用は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。体調や受診の要否についての判断は、主治医など医療者にお任せください。
本アプリは医療機器ではなく、診断や治療の判断を行うものではありません。

今日も、読んでくださってありがとうございます。