介護から逃げられないので、作る側にまわることにした

CareQuest を作った理由の話。親の介護がはじまった日のこと、「なんで自分が」と思った夜のこと、そして「ひとりじゃない」を機能にしようと決めたことについて。

介護には、はじまった日がはっきりしないものがあります。

私の場合がそうでした。親が難病と診断され、身体が少しずつ、思うように動かなくなっていく。手伝うことがひとつずつ増えて、気づいたときには、それは介護と呼ばれるものになっていました。学業を続けながら、のちには仕事をしながら、家では介護をする——いわゆるヤングケアラーというやつです。当時は、その言葉も知りませんでした。

正直に書くと、「なんで自分がこんな苦労をしてるんだ」と思った夜は、一度や二度ではありません。周りは自由に見えるし、介護の話をすれば場が重くなるだけなので、だんだん話さなくなる。介護のいちばんの重さは、体力でも時間でもなく、孤独かもしれない。 いまは、そう思っています。

腹をくくったら、少し楽になった

あるとき、逃げ道を探すのをやめました。介護から逃げられる道は、私にはない。だったら、この生活を少しでも楽にする工夫を積み重ねるほうが早い。

幸い、私はエンジニアになっていました。介護の経験は、ずっと弱みだと思っていたけれど、道具を作る人間にとっては、これ以上ない「現場の知識」です。弱みを強みに変える。 大げさに言えば、いまやっているのはそういうことです。

「ひとりじゃない」を、機能にする

CareQuest は、その最初の一歩として作った小さな Web アプリです。今日できたことをタップで残す記録アプリなのですが、本当に作りたかったのは、記録機能ではありません。

介護は、話せば苦労話になります。だから、話したくない日のほうが多い。それでも、「自分と同じように、今日どこかで介護に向き合った人がいる」ということだけは知りたい。会話はいらない。気配だけでいい。

そこで CareQuest には「今日のともしび」という画面があります。表示されるのは、今日記録した介護者の匿名の人数だけ。コメントも、いいねも、比較もありません。ただ、灯りがともっているだけです。

これから

在宅介護を楽にする道具を、これからも作っていくつもりです。CareQuest はその中心として、「ひとりじゃない」が伝わる場所に育てたい。使ってくれる人と知識や工夫を共有しながら、前向きにやっていけたらと思っています。

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今日も、どこかで誰かが介護しています。あなたも、私も、そのひとりです。

今日も、読んでくださってありがとうございます。