食事でむせるようになったら — 「誤嚥」の相談は介護保険でできる
飲み込みの力は「口腔機能向上」という介護保険のサービスで診てもらえます。担当する職種、専門職が使う評価、家族が観察して伝えるとよいことを、厚生労働省のマニュアルから整理しました。
食事のたびにむせるようになった。飲み込むのに時間がかかる。食べる量が減ってきた。
このとき、どこに相談すればいいのかが分かりにくい。
歯の話なら歯医者、体の動きなら整形外科、と見当がつきます。飲み込みは、その中間に落ちます。
「口腔機能向上」というサービスがある
介護保険には、口腔機能向上という区分のサービスがあります。厚生労働省のマニュアルは、対象をこう書いています。
口腔清潔・唾液分泌・咀嚼・嚥下・食事摂取等の口腔機能の低下が認められる状態の者
歯の治療とは別枠です。飲み込みそのものを扱います。
担当するのは、言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員。ケアマネジャーに「飲み込みが気になるので、口腔機能向上を検討したい」と伝えるのが入口になります。
家族から言って構いません。 向こうから提案が出るのを待つ形の話ではありません。
訓練だけではない。食事の環境も対象
「訓練」と聞くと、体操を教わって終わりに思えますが、マニュアルが挙げている内容はもっと広いものです。
指導の対象に入っているもの:
- 食事のときの姿勢(体位)
- 食具の選択
- 食べるペース
- 食物形態
つまり、「どう食べるか」の環境ごとが相談の範囲です。姿勢や食器を変えるだけで変わる部分は、そこで出てきます。
訓練のほうも、想像より幅があります。飲み込みに使う筋肉の訓練(頭部挙上・喉頭挙上)に加えて、呼吸機能の訓練——腹式呼吸や、咳の訓練まで含まれています。
咳の力は、入ってしまったものを出す力です。飲み込みを鍛えるだけでなく、出す側も対象になっている。
口の中の清潔が、肺につながる
飲み込みの話と別に見えますが、つながっています。
マニュアルは、歯にこびりついた歯垢、清掃不良の義歯にこびりついたプラーク、そして舌のよごれについて、こう書いています。
全身の抵抗力が低下している高齢者や要介護高齢者の場合には、誤嚥性肺炎をはじめとする呼吸器感染症の原因となる
義歯と舌が、はっきり名指しされています。 歯を磨く話にとどまらない、ということです。
「むせるかどうか」だけで測らない
専門職は、むせの有無だけを見ているわけではありません。
マニュアルには反復唾液嚥下テストという評価が出てきます。一定時間に何回飲み込めるかを数えるもので、3回未満が判断の目安のひとつとして挙げられています。
そして、認知症などで指示が伝わりにくくテストが難しい場合に、食事の際のむせの有無を参考にする、という順番で書かれています。
むせは代わりの手がかりのほうです。だから逆に言えば、むせていないから大丈夫、とも限りません。
家族が持っていくとよいもの
評価は専門職がしますが、家に居る時間の情報は家族しか持っていません。
伝えると話が早いもの:
- いつむせるか——食事の最初か、後半か。飲み物か、固形物か
- 時間帯——朝と夜で違うか
- 食べる量と、かかる時間が変わってきたか
- 声の変化——食後に声がかすれることがあるか
- 熱を出す頻度が変わったか
「なんとなく増えた気がする」より、いつ・何で・どれくらいがあるほうが、評価につながります。
パーキンソン病の場合
薬の効いている時間帯によって、同じ食事でも飲み込みやすさが変わることがあります。
食事の時間を薬に合わせてずらせるかどうかは、主治医と相談する領域です。ただ、「この時間帯はむせやすい」という観察は、相談の材料になります。
この記事で扱っていないこと
とろみの付け方、食事の形態をどう変えるか、どの訓練をするかは書いていません。飲み込みの状態によって適切なものが変わり、間違えると危ないほうに動くからです。言語聴覚士・歯科衛生士・主治医の領域です。
ここで整理したのは、その判断をしてもらうために、どこへ、どう頼むかです。
CareQuest は、その日のことを短く残すための記録アプリです。飲み込みの状態を判断するものではありませんが、上に挙げた「いつ・何で・どれくらい」を数日ぶん残しておけば、相談のときにそのまま持っていけます。無料・登録なしで開けます。
参考: 厚生労働省 口腔機能向上マニュアル(改訂版・平成21年3月)
ご注意: この記事は、飲み込みの状態についての医療的な助言ではありません。とろみ・食事形態・訓練の内容は、言語聴覚士・歯科衛生士・主治医の判断に従ってください。

今日も、読んでくださってありがとうございます。