成年後見は、始めると簡単には終わらない — しかも制度がいま、変わる途中です
法定後見は申立てのきっかけが片づいても終わりません。後見人は家族とは限らず、報酬は本人の財産から出ます。そのうえ2026年6月に改正法が成立し、後見・保佐は補助に一元化されることが決まりました。施行前のいま、何を知って動くかを整理しました。
親のお金のことを考えはじめるのは、たいてい何かができなくなったあとです。定期預金が解約できない、施設の契約が結べない。そこで初めて調べて、成年後見制度にたどり着きます。
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この記事は制度の入門ではありません。始める前に知らないと、あとから戻れない部分だけを集めています。
まず、制度がいま変わる途中です
2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、6月24日に公布されました。成年後見制度について、後見・保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化し、本人にとって必要な範囲で使えるようにするという内容です。
施行は、公布から2年6月を超えない範囲で政令で定める日とされています。つまり2028年12月までのどこかで、具体的な日はまだ決まっていません。
それまでは、いまの制度がそのまま動きます。この記事に書くのは現行制度の話です。ただし「いずれ変わることが決まっている」という前提は、いま申立てるかどうかを考えるときに効いてきます。
気づく順番が、選べる型を決めてしまう
ここは改正とは関係なく、いまも先も変わりません。
成年後見には2つの入り方があります。任意後見は本人が十分な判断能力を持っているうちに、あらかじめ公正証書で結んでおくもの。法定後見は判断能力が下がったあとに、家庭裁判所が後見人を選ぶものです。
厳しいのはここです。任意後見は、判断能力が十分なうちにしか結べません。
「銀行で止められた」と気づいた時点では、任意後見という選択肢は多くの場合もう残っていません。気づくのが遅いと、選べるのは法定後見だけになります。制度を比較して選んだのではなく、順番で決まってしまう。
法定後見は、きっかけが片づいても終わらない
いちばん誤解されやすいところです。
厚生労働省の説明では、申立てのきっかけになったこと(預貯金の解約、遺産分割、保険金の受取など)が解決したあとも、本人の能力が回復するか、本人が亡くなるまで手続は続きます。そして家族の意思や本人の希望でやめることはできません。
「定期預金を1回解約したいだけ」で入口に立つと、ここで話が変わります。一度きりの手続きではありません。
改正法が変えるのは、まさにこの硬さです。施行後は、事理弁識能力が回復していない場合でも、制度を使う必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、申立てまたは職権で終了できるようになります。
ただし施行前は、いまの仕組みがそのまま適用されます。
すでに後見や保佐を使っている場合は
いま使っている人がいちばん気になるところだと思います。経過措置は法律の附則で決まっています。
後見・保佐を利用中の場合、施行後は3つから選べます。
- そのまま続ける — 基本的に現行法の内容で利用を継続できます。ただし解任の事由と、本人の意向を把握する義務については、改正後の民法が適用されます
- 新制度へ移る — 改正後の補助の制度に申立てをして移ることができます。このとき、いま受けている後見・保佐開始の審判は取り消されます
- やめる — 後見・保佐開始の審判の取消しを申し立てることができます
申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人・保佐人などです。
すでに補助を使っている場合は、改正後の補助の内容でそのまま継続できます。やめたいときは補助開始の審判の取消しを申し立てられます。
つまり「勝手に切り替わる」わけでも「一生そのまま」でもありません。選ぶ場面が一度来る、と思っておくのが正確です。
なお令和7年12月末の時点で、後見が18万0828人、保佐が5万8162人、補助が1万8078人。圧倒的に後見が多いのは、判断能力を欠く常況と認定されると後見しか選べなかったからです。今回の一元化は、そこを変えるものです。
後見人は、家族とは限らない
申立てのときに「この人を後見人に」と候補者を挙げることはできます。ただし決めるのは家庭裁判所で、家庭裁判所が本人にとって最も適任だと考える人を選びます。そして誰を選ぶかという判断に、不服申立てはできません。
本人に法律上または生活面での課題がある、財産管理が複雑で難しいといった事情があるときは、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選ばれることがあります。
家族が申し立てたのに、家族以外がお金を管理することになる。これは制度が壊れているのではなく、想定されている運用です。知って申し立てるのと、知らずに申し立てるのとでは、あとの受け止め方がまったく違います。
報酬は、本人の財産から出る
後見人は、家庭裁判所が決めた報酬を本人の財産から受け取ることができます。専門職が選ばれた場合は、ここが継続的な負担になります。
家族が後見人になった場合も、報酬を受け取ることはできます。逆に言えば、誰が就いても「必ず無償で続く仕組み」ではありません。具体的な額と回数は事案によって違うので、申立ての前に家庭裁判所か専門職に確認してください。
手前に、別の引き出しがあります
法定後見は、いくつかある道のうちのひとつです。段階によって使えるものが違います。
- 日常生活自立支援事業 — 社会福祉協議会が行うもの。判断能力に不安はあるが契約の内容は理解できる、という段階で、日常的なお金の出し入れや書類の預かりを手伝ってもらえます
- 金融機関の代理人の届出 — 家族を代理人として登録しておく仕組み。扱いは金融機関ごとに大きく違うので、取引のある窓口で確認が要ります
- 任意後見 — 判断能力が十分なうちに、公正証書で決めておくもの
- 家族信託(民事信託) — 財産の管理を家族に託す契約。これも判断能力があるうちに結ぶものです
下の3つは元気なうちにしか手が打てません。だから「まだ早い」と思っているうちが、いちばん選べる時期になります。
ご注意: 制度の対象・手続き・費用は状況や自治体によって異なります。改正法の内容と経過措置は法律の附則で定まっていますが、施行日はまだ政令で決まっていません。自分の場合にどう当てはまるかを含め、必ず最新のことを窓口で確かめてください。入口は地域包括支援センター(相談の仕方)、市区町村の成年後見センター、司法書士会・弁護士会・社会福祉協議会の相談会です。この記事は法律の助言ではありません。
認知症の高齢者だけの制度ではありません
成年後見は認知症とセットで語られがちですが、法務省の説明では対象は「認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々」です。若い世代でも、事故や病気や生まれつきの障害で対象になります。
「うちはまだ高齢じゃないから」は、この制度に関しては理由になりません。
元気なうちに、何を話しておくか
重い話に聞こえますが、必要なのは決定ではなく確認です。
- お金がどこにあるか(口座、保険、年金の入金先)
- 誰に頼みたいと思っているか
- 施設や医療について、本人の希望はどうか
3つ目は 人生会議 の話につながります。1つ目は、契約のたびに聞かれる基本情報(口座・保険・かかりつけ医・既往歴)を一枚にまとめておくと、そのまま使えます。
一度で決めきる必要はありません。話題に出したことがある、という事実だけで、あとの動きがまったく変わります。
この記事で扱っていないこと
- 申立ての具体的な手続き(書類、費用、期間)。家庭裁判所と専門職の領域です
- 改正法の詳しい中身。特定補助の仕組み、任意後見の見直し、死後事務の権限など、この記事で触れていない改正点が多数あります
- 施行日。公布から2年6月以内としか決まっておらず、政令待ちです
- どの型を選ぶべきかの判断。財産の内容と家族の状況で変わります
- 相続や遺言
- 法律の助言。具体的なことは司法書士・弁護士へ
参考: 法務省 「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について/ 法務省民事局 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)概要(経過措置は6ページ)/ 法務省 成年後見制度・成年後見登記制度Q&A/ 厚生労働省 成年後見はやわかり 法定後見制度とは・成年後見人等の選任と役割
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今日も、読んでくださってありがとうございます。