なぜ「荷物を入れるだけ」にしなかったのか

介護の持ち物アプリに、かわいさとワクワクを入れた理由。詰める作業そのものは楽しくない——だからこそ手ざわりと前後の気持ちに手をかける、という設計の話です。

CareReadyは、介護の持ち物チェックリストです。機能だけなら、白地に四角いチェックボックスが並んでいれば十分。実際、最初はそうでした。地味で、正確で、静かなアプリ。

それを、途中からかわいく・ワクワクする方向に振り直しました。やわらかいパステルのキャンディ色、丸いチェック、カテゴリーごとに色分けされたシール帳みたいなカード、箱に詰めると色がつき、詰め終わると✅のスタンプがたまっていく。準備ができたら風船と紙吹雪。

「介護のアプリなのに、ふざけてない?」と思われるかもしれません。だから、なぜそうしたのかを書いておきます。

荷物を詰める作業は、楽しくない

正直に言うと、荷物を詰めること自体は、楽しくありません。しかも、頻繁にやることでもない。ショートステイは数日に一度、入院はまれ。「毎日使いたくなる楽しいアプリ」には、構造的になりにくい。

ここで気づいたことがあります。続けて使ってもらえる理由は、“作業そのもの”の外側にしか作れない、ということ。作業を楽しくしようとするのは、たぶん筋が悪い。だったら、作業の“手ざわり”と、前後の“気持ち”を整えるほうにお金をかけよう、と。

  • 手ざわり:チェックすると小さくポンと弾む。「+1」がふわっと浮く。箱に入れると色がつく。一手ごとに、ほんの少し気持ちいい。
  • 気持ち:送り出すときの「いってらっしゃい」。帰ってきたときの「おかえりなさい」。感情のいちばん動く瞬間に、ごほうびを置く。

かわいさは、不安をやわらげる

もうひとつ。使うのは50〜70代のご家族が多い。介護施設に向けて荷物を詰める時間は、たいてい心細い時間です。そこに冷たい・機械的な画面より、明るくてやさしい色のほうが、見やすさの面でも、気分の面でも合っている——というのが、作って見比べた実感でした。高齢のご家族に見てもらうと、暗いテーマより明るいクリーム色の画面のほうが、文字も読みやすく、表情もやわらぐ。

ただし、子ども扱いはしない

線引きも決めました。マスコットやキャラで子どもっぽくはしない。パステルで“やさしい”止まり。「〜しましょうね」を連発して介護者を子ども扱いしない。あたたかいけれど、対等。尊厳を守るのが最優先で、かわいさはその範囲でだけ効かせる。介護される人も、する人も、子どもじゃない。

機能の隣に、感情を置く

介護の道具は「正しく動く」だけでは足りない、と思っています。正しさの隣に、ほんの少しの楽しさと安心がある。荷物を詰めるだけの話にしなかったのは、荷物の話じゃないからです。誰かを送り出し、また迎える、その毎日の話だから。

——効率の道具に、かわいさを足すのは甘えではなく、続けてもらうための設計だと思っています。

今日も、読んでくださってありがとうございます。