現場の言葉に合わせる——「失禁」を「汚れたとき用」に、老健と施設の違い
「失禁の予備」を「汚れたとき用」に。老健と施設入所の違い、特養はショートも長期もやるから期間・目的で分ける。現場の実態と当事者の尊厳に、言葉とデータを合わせていく地道な手入れの話です。
持ち物リストのアプリをつくっていると、いちばん手が入るのは、実は言葉と分類です。機能は同じでも、「どう書くか」「どこに入れるか」で、当事者の気持ちも、使いやすさも変わる。使ってくれる人からの指摘で、少しずつ直してきました。
いくつか、実際に直した例を書いておきます。
「失禁の予備」→「汚れたとき用の予備」
デイサービスの持ち物に、「着替え1組(失禁・食べこぼし時の予備)」と書いていました。指摘をもらいました。「失禁って書くの、きつくない? 該当しない人もいるよ」。
その通りでした。汚れる理由はいろいろ——こぼした、汗をかいた、そういうこともある。わざわざ「失禁」と名指しする必要はない。「汚れたとき用の予備」に変えました。誰にでも当てはまり、そして、きつくない。言葉ひとつで、道具の当たりがやわらかくなります。
「老健」と「施設入所」は違う
行き先の分類も、現場の実態に合わせて何度も直しました。
- 老健(介護老人保健施設)は、リハビリして家に帰るための一時的な入所
- 施設入所は、特養や有料老人ホームなどに長く暮らすこと
さらにややこしいのは、特養は「ショートステイ」も「長期入所」も両方やること。だから行き先に「特養」と書くと、どっちのことか分からなくなる。悩んだ末、施設名を並べるのをやめて、「短期の宿泊」「長期の入居」「リハビリ・在宅復帰」と、期間・目的で分けることにしました。小規模多機能や看護小規模多機能のお泊まりも含めて、これなら破綻しません。
とろみ剤は「使う人だけ」に
「とろみ剤」という項目も見直しました。これは飲み込む力が弱った方が、水やお茶にとろみをつけて、誤嚥(気管に入ること)を防ぐためのもの。誰にでも要るものではありません。
だから、使う人だけに表示される「条件」にしました。使わない人のリストには出てこない。「デイで入浴する」なども同じで、その人・その場面に関係するものだけが並ぶようにしています。
地味だけど、いちばん効く
新しい機能を足すより、こういう言葉と分類の手入れのほうが、実は現場では効くことが多い。正確であること、そして当事者の尊厳を傷つけないこと。この2つに、言葉とデータをすり合わせていく。
そしてこれは、一人では気づけません。介護をしている人、施設の職員さん、実際に使う人からの「それ、ちょっと違うよ」が、道具を現場のものにしてくれます。指摘は、宝物です。
——正しく、やさしく。持ち物リストの本当の仕事は、チェックボックスの外側にある。
私たちが作っている CareReady の画面の言葉も、現場で実際に使われている言い方に近づけながら直しています。家族向けの持ち物チェックはすでに公開中で、「この言い方は違う」があれば、それがいちばん助かります。
CareReady は介護の持ち物準備を支える生活支援ツールであり、医療機器ではありません。持ち物や薬の準備は、利用先の施設の案内と医師・薬剤師の指示を優先してください。

今日も、読んでくださってありがとうございます。