声で「呼べる」ことと、助けが来ることは違う
手でボタンを押しにくい人にとって、声は大切な入口になります。ただし、声の呼びかけを緊急時の仕組みとして扱うには、まだ多くの確認が必要です。
手が動かしにくいとき、ベッドから起き上がりにくいとき、目の前のボタンに手が届かないとき。
「声で呼べたらいいのに」と思う場面があります。
その思いから、私たちは Alexa を使って、声の呼びかけをあらかじめ決めた連絡先へつなぐ小さな試作を作りました。名前は EchoCare です。
けれど、作ってみて最初に大切だと分かったのは、声で呼べたことと、助けが届くことは同じではないということでした。
声は、使いやすい入口になることがある
声で「呼んで」と言うことには、画面を開く、番号を探す、ボタンを押すより負担が少ない場面があります。
覚える操作が少ない。手がふさがっていても言える。家族にとっても、「どこを押すの?」を説明し続けなくてよいかもしれない。声とボタンのそれぞれの向き不向きは、声とボタン、どちらで頼むかにも書きました。
だから、声を生活支援の入口として考えること自体には意味があります。
ただ、入口が使いやすいことだけでは、緊急時に頼れる仕組みにはなりません。
「電話が鳴った」と「助けが来る」の間には、たくさんのことがある
現在の EchoCare は、Alexa への呼びかけを受け、あらかじめ一つ設定した電話番号へ音声通話をかける研究プロトタイプです。
ここには、まだできないことがあります。
- 連絡を受けた人が応答したかを確認すること
- 応答がないときに、次の人へ確実に連絡すること
- 複数の家族やスタッフの状況に合わせて届け先を変えること
- 通信や端末に問題があるときに、別の方法へ切り替えること
- 誰が呼んだのか、どのような状況なのかを適切に扱うこと
電話が一度鳴っても、相手が気づかなかったらどうするのか。夜中なら誰に届けばよいのか。呼びかけが誤って起きたときはどうするのか。
本当に頼れる仕組みにするには、声を受け取る部分より、その先の約束を考えなければなりません。
だから、いまは「研究プロトタイプ」と書いています
動くものができると、つい「使えます」と言いたくなります。
でも、介護に関わる道具では、できることを大きく見せるより、できないことを先に伝えるほうが大切な場面があります。
EchoCare は現在、医療・緊急用途では使えません。既存のナースコールや緊急通報の代わりになるものでもありません。声の入力が生活支援にどこまで使えるのかを考えるための、公開された研究プロトタイプです。
この線引きは、弱さではなく、使う人の安心を守るためのものだと考えています。
いま、家で使うなら別の手段を決めておく
体調が急に悪い、転倒した、危険を感じるなど、すぐに助けが必要な場面では、地域の救急要請や、家族・支援者とあらかじめ決めた緊急連絡の方法を使ってください。
声の技術は、これからもっと暮らしの役に立てる可能性があります。その可能性を急いで「安全」と呼ぶのではなく、誰に、どう届き、届かなかったときにどうするかを一つずつ考えること。
それが、私たちが EchoCare で続けている研究です。
ご注意: EchoCare は初期段階の研究プロトタイプであり、医療機器・緊急通報サービスではありません。医療・緊急用途には使用できません。緊急時は 119 番などの公的な連絡手段や、あらかじめ決めた連絡方法をご利用ください。

今日も、読んでくださってありがとうございます。